糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『SHERLOCK』シャーロックとジョンの関係を読む(シーズン1)

このドラマについて今さら私が書くこともない、と前回『SHERLOCK』についての記事で書いたのに、書いてみると好きなものについて書く楽しさを止められなくて、性懲りもなくまた書いている。こんなにも世界中の人たちの興奮と想像力をかきたてるこのドラマってなんなんでしょう。

シャーロックとジョンの関係は、出会いから少しずつ変わっていって、お互いに信頼を深めていくように見えるけれど、ときどき2人の本心がよくわからないところがある。そんなわけで、再放送を見ながら2人の関係を振り返ってみたいと思います。

 

S1E1『A Study in Pink(ピンク色の研究)』

ジョンと出会うまで、シャーロックにとっての友達は頭蓋骨だけだった。

ジョンがはじめてベイカーストリート221Bを訪ねたとき、部屋にある頭蓋骨を杖で指し

「The skull?」

と聞く。

「A friend of mine.」

おそらく、ジョンと出会うまでのシャーロックは1人でいるのが当たり前で、自分よりレベルの低い人たちに合わせなければいけないなら、1人でいた方がいいと思っていたのだろう。しかしジョンと出会って、シャーロックは人と一緒にいることの楽しさと1人の孤独を知ったのだろう。いや、話しかけても反応しない骸骨を友達に見立てている時点で、孤独ではあったのかもしれない。小さな子が、遊んでくれる相手がいなくて人形相手に遊ぶように。話すことができない相手でも、「友達」とか「相棒」と呼べる存在がシャーロックには必要だった。

ジョンは戦地から戻ったばかりで、気力を失くしていた。マイクロフトが分析したように戦場が恋しかったのだろうか。マイクロフトがジョンを呼び出すシーンは印象的だけれど、変人の弟と一緒にいる男に対する兄の面接だったんだろうなあ。

退屈な日常より刺激的な戦場を求めてシャーロックと一緒にいようと思ったなら、シャーロックとジョンは似ている。

このエピソードでは、シャーロックの自己顕示欲が犯罪者に転じるきっかけとなる可能性があることを示唆される。それを止められるのはジョンなのだろうか。

しかしここで気になるのは、このエピソードでシャーロックは誰も殺していないが、ジョンは違う。躊躇なく冷静に人を撃つ。軍人の経験からかもしれないが、もっと深い心の闇があるのだろうか。

 

S1E2『The Blind Banker(死を呼ぶ暗号)』

エピソード1から少しだけ2人の関係性は変化している。

自分にとって特別な存在だと感じているジョンを、シャーロックは失いたくない。

だから、シャーロックは何者かに221Bで襲われたとき、ちょうど買いものに出ていたジョンにはそのことを話さなかった。ジョンが部屋を出て行ってしまうのが怖かったのだろう。

シャーロックに調査を依頼してきたセバスチャン(シャーロックの大学時代の同級生)を2人で訪ね、ジョンを紹介したときに言った、

「This is my friend.」

このfriendという単語を強調して言っているのを聞くとわかるように、シャーロックは自分にも友達と呼べる人がいるのだとセバスチャンに言いたかった。ジョンにはあっさりと同僚だと言い直されてしまうのだけど。

ジョンはこの時点では、シャーロックを友達だと認めていない。

このエピソードでは、2人の気持ちはすれ違い続ける。

失踪したスーリンの部屋でシャーロックが襲われたときには、油断して襲われたかっこわるい自分をジョンに知られたくなかったのか、そのことを隠す。そのことがジョンに、ないがしろにされているという気持ちを起こさせるかもしれないなんて思いもしない。ここで見えるのは、初めてできた友達への接し方におけるシャーロックの不器用さ。

 中国の密輸団がかくれみのにしているサーカス団のショーの客として入ったときにも、デート中のサラと2人になりたいジョンに

「I need your help.」

とシャーロックは伝えるが、ないがしろにされていると思っているジョンには響かない。

 

S1E3『The Great Game(大いなるゲーム)』

シャーロックの気持ちがジョンのそれを上回っている。このエピソードでの、好きな相手(ジョン)に対するシャーロックの子どもっぽさが私はけっこう好きだ。

シャーロックは、はじめての友達に対してどう接したらいいかわからない。知識が偏りすぎているという欠点を指摘されたシャーロックは、自分には必要ない知識だと反論し、すねたようにソファーに寝転がりひざを抱える。何を言っても反論されるジョンは、外へ出かけてしまう。窓からジョンの姿を見るシャーロックは、かまってほしいのに素直になれない恋人のようだ。事件が起きるのを待ち望むのも、ジョンと一緒に事件を追うのが楽しくて仕方なかったからじゃないか。

レストレードから依頼の電話を受けたシャーロックは、スコットランドヤードにジョンを誘う。一瞬戸惑った顔をするジョンは、シャーロックの捜査に自分が必要だとはわかっていない。ここで原作のホームズのように

「心から信頼できる友人がそばにいてくれるかどうかで、僕の気持ちは天と地ほどのひらきが出てくる」

シャーロック・ホームズの冒険東京創元社 コナン・ドイル作 深町真理子

 なんてシャーロックが言えたらね。

人質の命を最優先で考えるジョンに対し、ゲームを楽しんでいるように見えるシャーロックをジョンは理解できない。シャーロックとジョンのこの考え方の違いは、2人がどんなに親しくなったとしても決してうまらないだろう。

太陽系についてもう少し知っていたら、もっと早く事件を解決できたとシャーロックが認めるのを待っているというジョンに対し、シャーロックはやはりそれを認めない。少し力の抜けた声で話すジョンは、シャーロックを理解することをすでに諦めているようにも見える。

真夜中のプールにモリアーティを呼び出したシャーロックだが、ジョンを人質にとられてしまう。自分以上に犯罪をゲームとしてしか思わないモリアーティと話し、シャーロックは自分はモリアーティとは違うと感じる。

ジョンは体を張ってシャーロックを銃から守ろうとする。このことで2人は信頼は深まる。シャーロックはうまく感謝を伝えられなかったけれど。

 

余談ですが、E1の最後でジョンはマイクロフトがシャーロックの兄だと聞き、てっきり・・・だと思った、と言いかけるのだけれど、多分ジョンは、マイクロフトのことをシャーロックの元彼と思ったんじゃないのかな。マイクロフトのセリフは、聞きようによってはそう聞こえるし(気にかけているだの同じ側にいるだの)。私はマイクロフトの底知れない感じ、好きです。

 

 

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