糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『誰からも好かれたがる気持ち』を捨てる(ドラマ『捨ててよ、安達さん。』第5回感想)

「安達さんいつも、みんなのバランス優先するじゃないですか。そろそろご自分を優先していいと思います。嫌われてる相手にまで気をつかう必要ないですよ」

その日、撮影中のドラマ『家政婦はFBI』で共演している梶原ひかりさんから、安達さんは当たり障りのないことしか言ってくれない、役としても役者としても安達さんと本気でぶつかりたいと強い口調で言われて、それを当たり障りなくぬらっとかわした安達さん。

撮影の帰りに、そのやりとりに気づいていたマネージャー西村さんからそう言われた。

 

この日、安達さんが捨てようと決めたのは『誰からも好かれたがる気持ち』。

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難しいよね、それを捨てるのは。

『嫌われる勇気』という本がはやるくらいだから、安達さんと同じようなことを考えている人はたくさんいるはずで、わざわざタイトルに勇気と入れるくらいだから、一般的に、嫌われるのは勇気がいる。

 

夜、安達さんの夢に彼女が現れる。

彼女の正体はわからない。安達さんが何かを捨てようとしたとき、いつもやってくる。見た目は少女だけれど、どこか悟ったような雰囲気で、小憎たらしいような可愛いような。

 

そして梶原さんも現れる。夢の中の梶原さんを、おもてなしする安達さん。きっと苦手な人にいつもこんなふうに気を遣っているんだろうなという感じで。

「嫌いとかじゃなくて、尊敬できないだけです。」

 梶原さんのこの言葉をきっかけに、梶原さんと謎の少女から安達さんに対するダメ出しが始まる。

 

「安達さんてさ、結局誰からも好かれていたいんだよね」

「だからどこか人との距離が縮まらないっていうか」

「無難なことしか言わないから嫌われはしないけど、ま、そこまでの存在っていうか」

ハッキリと目に見える悪癖を指摘されるよりも、こういう、その人のポリシーみたいなものを否定される方がぐさっときたりする。それにこういうことはだいたい、自分のポリシーに欠陥があると本人も気づいている。

 梶原さんの追求についに本音を言う安達さん。

「みんなが気持ちよく過ごせるように、考えて動いて何が悪いの?みんなが言いたい放題やりたい放題やってたら、この世界成り立たないでしょ」

私はどちらかというと梶原さんの考え方に近くて、社交辞令は会話において無用なものだと思っているし、みんなが言いたいことを言えばいい、その上でどこかに落としどころをみつけて、そうしてバランスを取ればいいと思っている。もちろん言いたいことというのは人を傷つけるようなことではなく、物事を進展させるための建設的な意見という意味で。

けれど、安達さんのように考える人がいることで、バランスが取れることがあることは知ってる。なんだかんだいって、なんとなくその場をうまくおさめるために私も社交辞令を言ってしまったりするし。

 

安達さんの結論は、『誰からも好かれたがる気持ち』を捨てない。

 

何を捨てるか、捨てないかの判断は、自分の奥深いところにつながっている。特に自分の気持ちや思い出は。

 

このドラマ、無駄なセリフやシーンがなくて、どこを切り取っても成り立たない。そこに安達祐実さんの演技と雰囲気が重なって心地よいものになっている。これをグルーヴと呼ぶのだろうか。