2022年2月のひとりごと
2022年2月半ば。
ついこないだお正月を迎えたばかりなのに、もうひと月半もすぎてしまったとは。
外に出ることや人と会うことを躊躇する日々がこれだけ長く続くと、さすがにクレイジーになる。
昨年は、このブログも2度しか更新してなったのですね。
まわりから閉じたような生活を送っていると、かたや北京で大きな冬の祭典オリンピックが同時期に行われていることが、なんだか信じられないような気がする。
といいつつフィギュアスケートの羽生選手に感動したり、カーリングの試合を応援したりしているのだけど。
羽生選手の4回転アクセルは、転倒は残念だったけれど、「神がかってるというのはこういうことか!」と思うほど素晴らしい演技だった。
パンデミックの中で、不安や不満を感じながらも、一方で歓喜したり感動したりする。人ってなかなかしぶといな。
人のその、しぶとさを信じよう。自分のしぶとさも。
どうか、今年こそ健やかで平和な年になりますように。
『思い出の靴を捨てる』(ドラマ『捨ててよ、安達さん。』第8回感想)
いつのまにか、このドラマが最初に放送されてから1年経っていたんですね。
去年巣ごもり生活が始まってからなんだか季節感がなくて、着る洋服が厚くなったりうすくなったりするだけで、大好きだったヒールを履くエネルギーもなくペタンコ靴を履くことが多い最近。
高いヒールを履こうと思う日は、いつもと違うエネルギーが要る。というより、靴からエネルギーをもらうという方が近いかも。服もそういう性質があるんだけれど、私にとっては靴の方がエネルギーをくれる気がする。ヒールの高さによって、その日見える景色が変わるからかもしれない。
安達さんがかつて交際していた男性とつきあっていたときに無理して買った価格もヒールも高めの靴が、捨ててほしいと頼みに来た。
過去に大好きな人とつきあっていたときに買った特別な靴。今は靴箱の中に入れたまま、履くことはない。
安達さんはその靴を履いていたころの自分を思い出す。
『たぶん彼のことが本当に、ものすごい好きすぎて、どんだけ背伸びしても不安で。でもあるときね、彼と並んで歩いてる姿がどっかのショーウインドーかなんかに映って。それで、びっくりしちゃって。もう・・・私の頑張ってますみたいな感じがすごすぎて。笑えてきちゃって。そしたらもう・・・。自分の無力さに打ちのめされちゃって。みすぼらしくて足痛くて苦しくて。足よりもっと、胸が苦しくて。』
背が低いことや子供っぽく見えることをコンプレックスに感じていた安達さん。彼とつりあう自分になりたくて、デートのときはそのヒールも価格も高めな靴を履いていた。
ふいに現れショーウィンドウの中の自分を見て、靴に自分のコンプレックスを確認させられたのかもしれない。その自分の姿に打ちのめされた安達さんは、それきりその男性とお別れしてしまった。
うめることができないとわかっているのに、コンプレックスのない自分を追い求めしまう。それを手に入れても幸せになれるとは限らない。
靴を履いていた自分を『全然似合ってなかったけどね』と言う安達さんに、『そんなことないよ。とっても似合ってた』と言う靴。
コンプレックスはうめられなかったけれど、叫びたいほど幸せだった。幸せな時間を安達さんが思い出すとともに、靴はかつての輝きを取り戻していく。
モノは、持ち主の気持ちを映すものなのだな。
そして、モノを手放しても、思い出は消えない。
2021年1月のひとりごと
始まった、2021年。
気づけば昨年の5月からこのブログを更新していなかった。精神的にも体力的にも、タフな1年だった。
自分を保って生活を送ることでいっぱいで、今思うと、自分の部屋ではないどこかごたごたとした場所で生活していたような感覚。全然リラックスできていなかったのだと思う。
年末年始の休暇をほぼ眠って過ごし、ようやく少しずつ回復してきてはいる。部屋の模様替えをしてみたり、アロマキャンドルを灯してみたり、数年のあいだ何もなかったベランダにグリーンを置いてみたり、そんなことをしてみている。
今年のテーマのひとつは、好きなものにかこまれて快適な暮らしをする。再びの緊急事態宣言が出て、巣ごもりすることが多くなり、その時間を快適に過ごすことは、精神的に余計なエネルギーを消費しないことにつながっていく気がする。
毎年、今年の目標的なものを考えるのだけれど、1月は「休養」。もう若くないのだわ。
それでもやってみたいことはたくさんあって、今はそのためにエネルギーを蓄えていこう。少しずつ、進んでいければいいと思う。
雲のはしごの上を歩いていったら、月まで辿りつけそうな気がする。
『誰からも好かれたがる気持ち』を捨てる(ドラマ『捨ててよ、安達さん。』第5回感想)
「安達さんいつも、みんなのバランス優先するじゃないですか。そろそろご自分を優先していいと思います。嫌われてる相手にまで気をつかう必要ないですよ」
その日、撮影中のドラマ『家政婦はFBI』で共演している梶原ひかりさんから、安達さんは当たり障りのないことしか言ってくれない、役としても役者としても安達さんと本気でぶつかりたいと強い口調で言われて、それを当たり障りなくぬらっとかわした安達さん。
撮影の帰りに、そのやりとりに気づいていたマネージャー西村さんからそう言われた。
この日、安達さんが捨てようと決めたのは『誰からも好かれたがる気持ち』。
難しいよね、それを捨てるのは。
『嫌われる勇気』という本がはやるくらいだから、安達さんと同じようなことを考えている人はたくさんいるはずで、わざわざタイトルに勇気と入れるくらいだから、一般的に、嫌われるのは勇気がいる。
夜、安達さんの夢に彼女が現れる。
彼女の正体はわからない。安達さんが何かを捨てようとしたとき、いつもやってくる。見た目は少女だけれど、どこか悟ったような雰囲気で、小憎たらしいような可愛いような。
そして梶原さんも現れる。夢の中の梶原さんを、おもてなしする安達さん。きっと苦手な人にいつもこんなふうに気を遣っているんだろうなという感じで。
「嫌いとかじゃなくて、尊敬できないだけです。」
梶原さんのこの言葉をきっかけに、梶原さんと謎の少女から安達さんに対するダメ出しが始まる。
「安達さんてさ、結局誰からも好かれていたいんだよね」
「だからどこか人との距離が縮まらないっていうか」
「無難なことしか言わないから嫌われはしないけど、ま、そこまでの存在っていうか」
ハッキリと目に見える悪癖を指摘されるよりも、こういう、その人のポリシーみたいなものを否定される方がぐさっときたりする。それにこういうことはだいたい、自分のポリシーに欠陥があると本人も気づいている。
梶原さんの追求についに本音を言う安達さん。
「みんなが気持ちよく過ごせるように、考えて動いて何が悪いの?みんなが言いたい放題やりたい放題やってたら、この世界成り立たないでしょ」
私はどちらかというと梶原さんの考え方に近くて、社交辞令は会話において無用なものだと思っているし、みんなが言いたいことを言えばいい、その上でどこかに落としどころをみつけて、そうしてバランスを取ればいいと思っている。もちろん言いたいことというのは人を傷つけるようなことではなく、物事を進展させるための建設的な意見という意味で。
けれど、安達さんのように考える人がいることで、バランスが取れることがあることは知ってる。なんだかんだいって、なんとなくその場をうまくおさめるために私も社交辞令を言ってしまったりするし。
安達さんの結論は、『誰からも好かれたがる気持ち』を捨てない。
何を捨てるか、捨てないかの判断は、自分の奥深いところにつながっている。特に自分の気持ちや思い出は。
このドラマ、無駄なセリフやシーンがなくて、どこを切り取っても成り立たない。そこに安達祐実さんの演技と雰囲気が重なって心地よいものになっている。これをグルーヴと呼ぶのだろうか。
2020年4月のひとりごと(パンデミックの中で)
アメリカの作家コニー・ウィリスの書いたSF「ドゥームズデイ・ブック」を再読している。タイムリープとパンデミックの話。
現実がどうなるかわからないのに、架空の世界でもパンデミックを読もうというのは、先が見えない状況の中でなんとかして先を見たいと思うからだろうか。
小説の中のパンデミックでは、都市が封鎖され、医療関係者が疲弊し、物資や病床が不足する。タイムリープが絡み、現在と過去がパラレルに進んでいく中、自分のいる現実が頭の中でリンクして、3つの世界がパラレルに進んでいるように思えてくる。
でも、いま起こっていることは架空ではない。日常生活は脆くこわれてしまうのだということを、2011年から9年経ち、東京にいる私は忘れかけていたかもしれない。
物事には良い面と悪い面があり、コロナウイルスの影響で、世界の都市の環境汚染物質が減少していることは、今回のパンデミックの良い面。もちろん悪い面の方が圧倒的に多く、それがいつ収束するのかはわからない。良い面である環境汚染の改善も、一時的だいう意見もある。
危機の中で、国や企業等の組織のトップがどんな態度をとるか、その人の理念がよく表れる。コロナウイルスによって、指導者や経営者の評価基準は変わっていくんじゃないだろうか。もしかしたら、それは良い面となっていくのかもしれない。
きっと、これに似たような状況は今後も起こる。これを切り抜けたら、次のパンデミックに対応できるよう、自分自身や身の回りを変えていかないといけない。そのために、考えよう。いろんなことを。そしてこの状況でもごはんを食べたりTVを見たりできるのは、その日常を守るために動いている誰かがいるから。日々感謝を。
この状況が少しでも早く良い方へ向かいますように。
2020年のはじめに
あけましておめでとうございます。
ついに、2020年。
新年なので明るいこと、「希望」について考えてみる。
それはなんとなく、天の川から星の欠片が舞い落ちてくるように、キラキラと空から降ってくるもののような気がする。希望に満ちあふれた人というのは、その星の欠片をたくさん受け取っている人のことを言うんだろう。
もし、この世界に存在する「希望」というものの総量が決められているとしたら、それは今どこに、誰に、多く注がれているんだろう。その量は増減するものなんだろうか。それとも常に一定量存在していて、「世界には希望がない」と思うとき、どこかに集中的に降り注いでいるんだろうか。
2020年は、世界に存在する「希望」の欠片がたくさん連なる年になってほしい。そしてたくさんの人の上に(できれば私の上にも)キラキラと舞い落ちて来る年になってほしい。
このブログについて。
前回の更新からすでに半年以上が経っていました。実は『フォイル』の書きかけ記事がそのままになっているので、だいぶ遅くなりましたが、少しずつ公開していきたいと思ってます。
今年はマイペースにブログを再開していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
2020年がよい年になりますように。
『刑事フォイル 反逆者の沈黙』感想
今回は、『 SHERLOCK』でモリアーティ役も演じていたアンドリュー・スコットがキーになる人物を演じています。心のうちに秘めたものを持っている役を演じるのは、やはり上手ですね。
自分の家の格式を守るため、また自分の利益の追求のために他の人を犠牲にする2人の男性の傲慢。そしてフォイルの過去。恋をしているサムがかわいいです。
あらすじ&感想
フォイルはついに警察を辞職し、過去の事件の片をつけるためアメリカへ渡る準備をしています。
サムが手伝っている下宿は経営がうまくいかず、オーナーのアダムと銀行に向かいますが、追加融資は断られます。
フォイルは、ジェームズ・デベローという青年が裁判にかけられると知ります。デベローという名前からフォイルはある女性を思い出し、ジェームズを助けたいと思い調査を開始します。
フォイルはジェームズの弁護士に会います。ジェームズはドイツでイギリス自由軍団(イギリス人捕虜による反共義勇軍。ドイツの宣伝工作として使われ、ソ連戦に送り出されました)に入りナチスに加担したとされ、このままだと絞首刑を免れません。フォイルは刑務所にいるジェームズを訪ねますが、肝心なことは聞けませんでした。しかし、彼がナチスに協力したのではないと確信します。
ミルナーはある下宿でアグネスという女性が殺害された事件の調査で、下宿の大家のラムジーに会います。アグネスはデベロー家の秘書でした。「ジャック」というボーイフレンドがいましたが、ラムジーによると「ジャック」は一度も下宿へ来たことがありません。
フォイルはジェームズの父チャールズに会うため、デベロー邸を訪ねます。デベロー家は旧家で、チャールズは家の格式を強調し、息子ではなく家の体面を心配していました。フォイルはチャールズの妻ジェーンから、ジェームズが8歳のときに、実の母キャロラインを事故で亡くしたと聞きます。ジェーンはチャールズの2人目の妻でした。
フォイルもまたラムジーに会いに行きます。彼女から、キャロラインが亡くなる数週間前にジェームズのピアノ教師ロスシュタインが窃盗で刑務所へ入れられたことを聞き、何か関係があるのではと疑います。また、アグネスがポケットに残していた手紙をラムジーから預かります。それは「ジャック」からアグネスに宛てられたもので、アグネスはそれをロンドンのあるホテルへ転送しようとしていました。
ミルナーと会って手紙を見せたフォイルは、手紙の不自然な部分を次々と指摘します。
フォイルが持ってきた手紙は、ミルナーの部下パーキンズがもっと丁寧に現場を探していたら、ミルナーが先に見ていたはずでした。もう少し手元に置いておきたいと手紙をミルナーに渡さなかったフォイルを見て、フォイルは警察を辞めたのにと言うパーキンズ。自分のミスを棚上げする彼に対し、もう少し敬意を払ってもらいたいと言うミルナーに
「もちろんです。あなたにですか?それともあの人(フォイル)に?」
あきれて何も言えないミルナー。パーキンズ・・・
ジェームズの裁判が始まりました。弁明を全くしないジェームズは国を裏切った罪で処刑場へ送られます。
フォイルは再び弁護士に会いに行きます。もうあなたにできることはないと協力を断る弁護士にフォイルは、アグネスの殺害、「ジャック」の手紙、ジェームズにピアノ教師の窃盗事件など、まだ調べるべきことはあると答えます。「ジャック」という名前に弁護士が反応し、ジャック・スタンフォードと名乗る怪しい青年が事務所へ来たことを伝えます。その青年は、ジェームズの裁判にも来ていました。
弁護士の事務所を出たフォイルは、知らない男性に一緒に来てほしいと声をかけられます。連れていかれた先は、海外の捕虜から情報収集をしている機関で、「ジャック」はイギリスのために、アグネスを経由してその組織に情報を送っていたのです。フォイルはそこでジャック・スタンフォードに会います。彼はアグネスに手紙を送った「ジャック」は自分だと言いますが、ジャックを怪しむフォイルはアグネスについて質問します。
ヘイスティングズの緑地に大きなショッピングモールを作る再開発計画があり、アダムとサムの下宿も取り壊される予定になっています。緑地を残したいと言うアダムに、住民のことを考えない傲慢な態度を取る開発者。賛成できないアダムは、サムと一緒に反対運動を開始します。フォイルから、以前緑地で遺跡の発掘計画があったと聞き、遺跡の存在を証明して開発を中止しようとします。
サムとアダムは緑地にローマ人の墓地があったことを突き止め、開発計画は中止になるかと思った矢先、2人の下宿がガス爆発を起こします。下宿経営をあきらめる2人。崩れていく下宿の中で、アダムはサムにプロポーズします。そんな状況でプロポーズされるのも、なんだかサムらしいです。
「ジャック」がジャック・スタンフォードと同一人物なのかを疑うフォイルとミルナーはラムジーに会いに行き、「ジャック」という名前に覚えはないかと聞きます。ラムジーは、ジェームズが幼い頃、キャロラインから、好きなマンガの主人公の名前の「ジャック」と呼ばれていたと答えます。「ジャック」はジャック・スタンフォードではなく、ジェームズでした。
最後のピースがようやく見つかりました。「ジャック」という名前は、母と息子の幸せな記憶の一部だったのです。それに気づいたフォイルの苦し気な顔は、すでに失われた2人の幸せを思いやったからでしょうか。
すべてがわかったフォイルはジェームズに会い、本当のことを話すよう促します。
ジェームズがイギリス自由軍団に入ったのは、兵士の士気を下げ、ドイツの情報をイギリスへ送るためでした。ジャック・スタンフォードもその組織にいて、ジェームズの行為に気づいていました。ドレスデンで大きな爆撃があった後、ジェームズは一時行方不明になり、ジャック・スタンフォードはそのことを利用してジェームズに成り代わり、イギリスへ戻ったのです。イギリスへ戻ると、自分が本物の「ジャック」でないことを知るアグネスを殺害しました。
フォイルはジェームズに、若い頃キャロラインと出会っていたことを話します。キャロラインはすでにチャールズと結婚していましたが、結婚生活は絶望的なもので、フォイルとキャロラインは互いに惹かれあうようになりました。しかしキャロラインはチャールズの子を妊娠していることがわかり、子どものためにチャールズの元へ戻りました。不幸な結婚生活に戻ったのはジェームズのためでした。
もしかすると、キャロラインは幼いジェームズに「正義感の強い警察官の友達(フォイル)」の話をしたことがあるのかもしれません。ジェームズが警官になりたがっていたのはその影響かもしれないとフォイルを見るジェームズを見て思います。
キャロラインは事故ではなく、ピアノ教師の窃盗を偽装して刑務所へ送った夫チャールズに離婚を切り出し、デベローの家柄が離婚するわけにいかないとキャロラインを殺害したのです。幼いジェームズはその一部始終を見て、いつか父を罰したいと思っており、そのために今回の裁判を利用したのでした。自分が処刑され、父チャールズも社会的な制裁を受けることを望んでいました。
ジェームズは本当のことを話し、解放されることが決まります。
私を忘れてと言って夫の元へ去るキャロラインを引き止めず、その後その夫によりもたらされた彼女の死を知ったことは、フォイルに苦いものを残したのではないでしょうか。 必ず力になるとジェームズに伝えたのは、キャロラインへの罪ほろぼしでもあったのかもしれません。
サムとアダムに見送られ、フォイルはアメリカへ向かいます。
『刑事フォイル』について書いた記事