糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『カルテット』STORY4 連鎖する秘密

第4回は、家森さんの回でした。

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家森さん役の高橋一生さんは、前クールのドラマ『プリンセスメゾン』で演じられた伊達さん役が好きだった。呼吸とか、指の先、目線の先まで行き届いた演技で、『カルテット』を見ようと思ったのは高橋一生さんが出るからというのもある。

(余談ですが、『プリンセスメゾン』はドラマ自体も好きだった。もう一度見たいけれど、残念ながら今のところ再放送の予定もDVD発売予定もないようです。)

  

自分の過去の秘密について話すとき、宝くじで6000万当たったことがある、とまずそこから始めるというのは、そのことが家森さんにとって今もそれだけ大きなことだったから。もしそれを受け取っていたら、そのときの未来であった現在を変えられていたかもしれない。

けれど時間は不可逆。から揚げにレモンをかけたら、もとに戻らないことはよくわかっているはずなのに、理解することと納得することは違う。

 

別府くんが言い出した、朝のゴミ出し問題。 

「僕が全部やっちゃうから、みんなやらないのかなあ。僕がやらなかったらみんなやるのかも。」

自分がやっちゃうから他の人はやらないのか、ということは、仕事ではけっこうある。ちょっとした雑用とか、誰かがやらなければいけないことだけれど、少しだけ面倒なこと。これはなかなか、解決するのが難しい。ちょっとしたことだから、そう思ってもたいていは強く言えない。別府くんみたいには。

仕事だけの関係ではないから、ゴミ出しのようにちょっとしたことでも、口に出してしまえるのかもしれない。別府くんは。

 

いろいろあったけれど、今さらなんだけれど「マキさん」が気になった。 

巻真紀さんは「マキさん」と呼ばれるとき、「巻さん」か「真紀さん」か、どちらで呼ばれていると思っているのだろう。

呼ぶ方は下の名前で呼んでいるつもりでも、呼ばれる方は苗字で呼ばれていると思っていたりすることもあるだろう。呼び方はその人との関係性を規定してしまうことがあるので、どう呼ぶか、どう呼ばせるかは、最初に出会ったとき、関係が変化するときに一考するべきかもしれない。私は巻真紀さんのことを、少しの親しみを込めて「真紀さん」と書いている。が、決して「真紀ちゃん」とはならない。

別府くんはどうなんだろう。巻、という苗字は真紀さんの夫のものなのだろうから「真紀さん」と呼びたいけれど、やはり「巻さん」と呼んでしまうのろうか。愛しいが虚しいに勝っているときなどは、「真紀さん」と呼びたくなるのかもしれない。そんなこと、どちらでもいいのか、マキさんには。

「語りかけても、触っても、そこには何もない。」 

横から見たら欠けているところなどないのに、上から覗くとぽっかり穴のあいたドーナツのように。真紀さんの、まだ見えない、暗くて深い空間には、どんな秘密が隠されているんだろう。

 

有朱のような人は、人の秘密の匂いを嗅ぎつける特殊な鼻を持っているんだろう。真紀さんの秘密を追っていたすずめちゃんは、「真紀さんの秘密を追っていた」という秘密を有朱に追われることになった。秘密が新たな秘密を作り出し、その秘密が別の他人に追われることになる。

大人だからって、秘密を守ることができるだろうか。

 

 

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