糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『刑事フォイル 臆病者』

『刑事フォイル 臆病者』の感想を書いています。シーズン1の第2話です。ドラマは現在、NHK BSプレミアムで再放送中です。

 

原題は「white feather」、「臆病者」と訳されています。「white feather」とは、

(闘鶏の尾の)白い羽⦅戦いに弱いしるしといわれる⦆;臆病者の証拠

だそう(英和辞典『GENIUS』より)。ホワイトフェザーは、ドラマの中で出てくるホテルの名前でもあり、登場人物を象徴しています。

今回は3人の父親が出てきます。ホテルホワイトフェザーのアーサー、殺人事件の容疑者となるデビッド・レーンの父イアン、そしてフォイル。

3人の父親の息子への思い、このドラマでは何度も出てくるテーマであるユダヤ人に対する感情、そしてフォイルとミルナーとの関係の変化に注目しました。

 

 あらすじ&感想

1940年5月。

ミルナーはロンドンで偶然ガイ・スペンサーと出会いました。ガイはフライデー・クラブというナチス寄りでイギリスの戦争に反対している政治団体の中心人物。スペンサーは、これから講演をするから聞いていかないかと声をかけます。講演の後、ガイはミルナーを食事へ誘います。その頃、スペンサーの主催するフライデー・クラブのメンバーは、路地裏である男性を暴行し怪我をさせていました。

ヘイスティングズでは、イーディス・ジョンストンという女性が軍のキャンプ近くの電話線を切る事件が起きます。フォイルがイーディスに話を聞くと、彼女はドイツ軍があと数日で攻めてきて、イギリスもやられると言います。

フォイルとサムは、イーディスの勤務先であるホワイトフェザーというホテルに向かいました。ホテルのオーナーであるマーガレットとアーサーの夫妻に話を聞きますが、新しい情報はありませんでした。2人にはスタンレーという息子がいます。

 

フォイルたちは、イーディスのボーイフレンドで漁師をしているデビッド・レーンに話を聞こうと港へ向かいます。デビッドは、イーディスはもともと明るい性格だったが、変わってしまったと言います。彼の父親のイアンも、イーディスは最近港へは来ていないと言います。

ホワイトフェザーにスペンサーが到着しました。彼の他にも、外務省で働くハーウッドらが集まってきていました。彼らはフライデー・クラブメンバーで、ユダヤ人をよく思わず、イギリスの参戦に反対の意見を持つ者たちです。彼らの他には、ウールトンという男性が泊まっていました。ウールトンは、拳銃を持ってきていました。スタンレーはウールトンの部屋で拳銃を見つけ、そのことを父親のアーサーに伝えます。

夜になり、ホワイトフェザーではフライデー・クラブの勉強会が始まりましたが、その途中でヒューズが飛んで部屋が真っ暗になりました。突然銃声が響き、明るくなるとマーガレットが倒れていました。

フォイルは、ホワイトフェザーで捜査を開始し、スペンサーとその秘書のフレミングに話を聞きます。スペンサーは、拳銃で狙われたのは自分だと言います。話が終わりフォイルが部屋を出ようとすると、

「君はユダヤ系かな?」

と問いかけます。何か言いたそうな顔をしますが、何も言わずに部屋を出ていくフォイル。人種差別に対する彼の考え方が現れた態度だと思います。

殺人の捜査のためホテルに足止めされている宿泊客たちは、サムに運転手なら家まで送れと要求しますが、サムはフォイルに確認しなければと答えます。

「私に逆らうのか?」

と聞かれ

「はい。そういうことになります。」

と笑顔で答えるサム。さすがです。

 

フォイルの息子アンドリューからフォイルに手紙が届きました。パイロットになったアンドリューの近況報告。フォイルは、手紙をテーブルのアンドリューの写真の隣に置きます。息子を心配する無言の演技がとてもよいです。

 ホワイトフェザーでフレミングから、事件のあった日に庭で男を見かけたと聞き、デビッドではないかと思い、港へ会いに行きますが、デビッドはフォイルの姿を見て逃げ出します。その後デビッドは、ロンドンへ向かう汽車に乗るところを逮捕されました。

 フォイルは、ホワイトフェザーでウールトンと名乗っていた男に会いに行きます。ウールトンは偽名、本名はウルフで、電気店を経営しています。ウルフの甥イツァークはユダヤ系であるために、フライデー・クラブのメンバーに暴力を受けてひどい怪我をしていました。ウルフはそのことでスペンサーを恨み、彼を殺害しようとホワイトフェザーに行きましたが、撃ったのは自分ではないと言います。

ウルフの店を出た後、フォイルは陸軍情報部に強引に連れていかれます。そこで、フライデー・クラブに潜入している諜報員からフォイルのことを聞いた、お願いしたいことがあると言われる。その諜報員はフレミングかと言うフォイルに、陸軍情報部は驚きます。フォイルの目はごまかせませんね。

陸軍情報部のお願いとは、5日前に盗まれたある書簡を探してほしいというもの。書簡の内容は、イギリスがドイツとの和平交渉を望んでいるというもので、それが表に出るとイギリス国民の士気が下がることになります。おそらく、外務省勤務のハーウッドが持ち出してガイに渡し、スペンサーがドイツへ渡す算段だろうと推測はできますが、書簡が出てこなければ逮捕はできません。陸軍情報部は、フレミングが諜報部員だとスペンサーたちに知られずに書簡を探さなければならず、マーガレット殺害の捜査でホワイトフェザーに入れるフォイルに頼むことにしたのでした。フォイルはホワイトフェザーを再度捜索しますが、書簡は見つかりません。

フォイルは再び港へ向かい、デビッドの父親イアンと話します。イアンは、デビッドは人を殺したはずはない、出向命令が出たから船を出すためにデビッドを釈放しろと言います。これはダイナモ作戦と言われたもので、フランスのダンケルクに民間の船を招集し、フランスとイギリスの兵士を救出する作戦でした。多くの兵士たちが救出され、後にダンケルクの奇跡と呼ばれます。

「俺の船には20人乗れる。たったの20人かもしれない。だが何百隻もの船が力を合わせて同じことをすればすごいぞ。でもデビッドがいなければ船を出せない。俺一人では船を操れないんだ。だから釈放しろ。国の役に立ちたい。釈放してくれたら、神に誓って俺が必ず息子をあんたのもとに連れて戻るから。逃がしたりしない。この作戦さえ終われば戻ってくる。そしたら気が済むまで取り調べろ。必ず息子は潔白だとわかるはずだ。俺やあんたと同じに。」

イアンの言葉に胸を打たれて、フォイルはデビッドを釈放します。イアンとデビッドはダンケルクへ向けて船を出します。

 

ホワイトフェザーでアーサーが睡眠薬を多量に飲んで、自殺を図りました。フォイルはアーサーの息子スタンレーと話します。スタンレーは、母のユダヤ人差別に嫌気がさし、ホテルの所有者である母を恐れて何も言えない父親も嫌いだった、逃げ場のない家庭だったと言います。フォイルはスタンレーに嘘はいけないと言います。スタンレーがアーサーの遺書を隠したことを見抜いてそれを言わせようとしたのですが、スタンレーは遺書のことを言いませんでした。

フォイルは病院にアーサーを訪ね、遺書がなかったと伝えます。アーサーは、マーガレットが遺言を書き換え、ホテルの半分がスペンサーに遺贈されることになり、自分は妻もホテルも失ったために自殺を図ったと言います。

警察署へ戻るとスペンサーが来ていました。スペンサーは秘書のフレミングを釈放してほしい、苦情を申し立てると言います。なおもフォイルに言います。

「息子さんは現在、フランス北部の戦場にいる。あなたも同じだ。息子さんは空軍だとか。息子さんを失ってもいいのか?殺されてもいいのか?ヒトラーポーランドに侵攻したというだけで。」

スペンサーは、人の弱いところを突いてくる人です。このやり方で、今までも多くの人を自分の味方につけてきたのでしょう。ミルナーもその一人です。ミルナーは、警察へ戻って一生懸命仕事をしようとしていますが、妻のジェーンはミルナーが義足になった現実を受け入れられず、家庭はうまくいっていません。誰にも理解されないという気持ちにスペンサーはつけ込んでいたのでしょう。

スペンサーは部屋を出るとき、ミルナーに声をかけます。

「そうだ。あの貸した本を読み終わったら返してくれ。」

 

イアンがダンケルクから戻り、フォイルとサムは港へ向かいます。港は傷ついた兵士たちであふれていました。ダンケルクで悲惨な光景を見てきたイアンは、まだ何千人もの兵士が残っている、必ず助けに行くと言います。姿を見せないデビッドに悪い予感を持ちながらフォイルは、デビッドはどこにと聞きます。

デビッドは死んでいました。イアンは死んだデビッドを連れて帰ってきたのでした。

「こいつを置いてくれば兵隊をもう一人乗せられたが、連れて戻ると約束したからな。連れてきた。」

泣くイアンを見て、どんなにイアンに憎まれることになったとしても、デビッドを釈放せず、ダンケルクに行かせなければよかったとフォイルは思ったでしょうか。デビッドにアンドリューを重ねて見ていたのだと思います。

 

フォイルはイーディスに会い、デビッドが死んだことを告げます。フォイルは、イーディスの祖母がユダヤ人だとマーガレットに知られ、脅されて電話線を切ったのではないかと聞きます。イーディスはそれを肯定します。フォイルは、証拠不十分でイーディスを釈放しました。

「デビッドのこと忘れないよね。」

フォイルに聞かれイーディスは答えます。

「忘れない。」

 

フォイルは病院にいるアーサーを訪ね、妻マーガレットの殺害容疑で逮捕すると告げます。アーサーはマーガレットを憎んでいました。長い間実行には移せなかったが、マーガレットにドイツ軍が攻めてくると聞かされ、それが本当になればイギリスは混乱し、殺人事件の捜査をする人員も割けないだろうと妻殺害を計画しました。勉強会の夜、アーサーは全客室の明かりをつけてヒューズが飛ぶようにして、暗闇で目印になるようパイプに硝酸カリウムを混ぜて発光するように細工をしました。ヒューズが飛んで暗くなったとき、パイプを妻の前に置き、それを目印に妻に向けて銃を撃ったのです。しかしその後、息子スタンレーがドイツ軍は攻めてこないと言っているのを聞き、自分は妻殺しで逮捕されると思い、自殺を図りました。

「謝っておいてください。息子に。いい父親になりたかったと。」

と言うアーサーに

「彼はわかってますよ。」

と声をかけ、フォイルはアーサーの病室を出ます。

 

事件が解決し、フォイルはミルナーを呼んで話します。

フォイルは、事件の容疑者だったスペンサーに肩入れしているミルナーの態度を責めます。フォイルの息子アンドリューが空軍にいることをスペンサーに話したのもミルナーで、そのことでミルナーに対する個人的な信頼も裏切ったと伝えます。フォイルに批判され、ミルナーは本音を話します。

ノルウェーから生還して以来、僕がどんな気持ちかおわかりになります?特別扱いもいりませんし、同乗してくれとも言いませんが、なんでこんな戦争が起きたのか、何の戦争かもわからない。スペンサーはわかってくれて、こう言ってくれました。僕には何の非もないと。」

「そうする理由があったからだ。」

フォイルは、ミルナーがスペンサーから借りた本を手に持ち、外務省で盗まれた書簡のことを話します。本の表紙の裏にはナイフで切られたようなあとがあり、表紙と表紙の内側に貼られた紙の間にわずかなすきまができていました。フォイルはピンセットでそこから書簡を取り出しました。スペンサーは、捜索を受けない警官の立場のミルナーを利用して、書簡をミルナーに貸した本の中に隠していました。それを見たミルナーはショックを受け、辞表を出しましょうかとフォイルに言います。

「辞表などいらないよ。君がいなければ、仕事が進まないからね。それよりも、今回のようなことは一度限りにして、これからは私を信頼してほしい。個人的な事情はさておき、私と君とサムの3人で一丸となって捜査に臨むことが大事だ。わかったか。」

「はい。よくわかりました。」

 「よし。」

 2人は握手を交わします。やっと、3人が1つのチームになりました。

 

フォイルはデビッドの葬式に出席します。イアンと目が合い、息子が同い年だと言うと、イアンは無言で頷きました。

 

 

『刑事フォイル』について書いた記事

 

 

 

 

 

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