糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『刑事フォイル 反逆者の沈黙』感想

今回は、『 SHERLOCK』でモリアーティ役も演じていたアンドリュー・スコットがキーになる人物を演じています。心のうちに秘めたものを持っている役を演じるのは、やはり上手ですね。

自分の家の格式を守るため、また自分の利益の追求のために他の人を犠牲にする2人の男性の傲慢。そしてフォイルの過去。恋をしているサムがかわいいです。

 

あらすじ&感想

 フォイルはついに警察を辞職し、過去の事件の片をつけるためアメリカへ渡る準備をしています。

サムが手伝っている下宿は経営がうまくいかず、オーナーのアダムと銀行に向かいますが、追加融資は断られます。

 

フォイルは、ジェームズ・デベローという青年が裁判にかけられると知ります。デベローという名前からフォイルはある女性を思い出し、ジェームズを助けたいと思い調査を開始します。

フォイルはジェームズの弁護士に会います。ジェームズはドイツでイギリス自由軍団(イギリス人捕虜による反共義勇軍。ドイツの宣伝工作として使われ、ソ連戦に送り出されました)に入りナチスに加担したとされ、このままだと絞首刑を免れません。フォイルは刑務所にいるジェームズを訪ねますが、肝心なことは聞けませんでした。しかし、彼がナチスに協力したのではないと確信します。

 

ミルナーはある下宿でアグネスという女性が殺害された事件の調査で、下宿の大家のラムジーに会います。アグネスはデベロー家の秘書でした。「ジャック」というボーイフレンドがいましたが、ラムジーによると「ジャック」は一度も下宿へ来たことがありません。

 

フォイルはジェームズの父チャールズに会うため、デベロー邸を訪ねます。デベロー家は旧家で、チャールズは家の格式を強調し、息子ではなく家の体面を心配していました。フォイルはチャールズの妻ジェーンから、ジェームズが8歳のときに、実の母キャロラインを事故で亡くしたと聞きます。ジェーンはチャールズの2人目の妻でした。

 

フォイルもまたラムジーに会いに行きます。彼女から、キャロラインが亡くなる数週間前にジェームズのピアノ教師ロスシュタインが窃盗で刑務所へ入れられたことを聞き、何か関係があるのではと疑います。また、アグネスがポケットに残していた手紙をラムジーから預かります。それは「ジャック」からアグネスに宛てられたもので、アグネスはそれをロンドンのあるホテルへ転送しようとしていました。

 

ミルナーと会って手紙を見せたフォイルは、手紙の不自然な部分を次々と指摘します。

フォイルが持ってきた手紙は、ミルナーの部下パーキンズがもっと丁寧に現場を探していたら、ミルナーが先に見ていたはずでした。もう少し手元に置いておきたいと手紙をミルナーに渡さなかったフォイルを見て、フォイルは警察を辞めたのにと言うパーキンズ。自分のミスを棚上げする彼に対し、もう少し敬意を払ってもらいたいと言うミルナー

「もちろんです。あなたにですか?それともあの人(フォイル)に?」

あきれて何も言えないミルナー。パーキンズ・・・

 

ジェームズの裁判が始まりました。弁明を全くしないジェームズは国を裏切った罪で処刑場へ送られます。

フォイルは再び弁護士に会いに行きます。もうあなたにできることはないと協力を断る弁護士にフォイルは、アグネスの殺害、「ジャック」の手紙、ジェームズにピアノ教師の窃盗事件など、まだ調べるべきことはあると答えます。「ジャック」という名前に弁護士が反応し、ジャック・スタンフォードと名乗る怪しい青年が事務所へ来たことを伝えます。その青年は、ジェームズの裁判にも来ていました。

弁護士の事務所を出たフォイルは、知らない男性に一緒に来てほしいと声をかけられます。連れていかれた先は、海外の捕虜から情報収集をしている機関で、「ジャック」はイギリスのために、アグネスを経由してその組織に情報を送っていたのです。フォイルはそこでジャック・スタンフォードに会います。彼はアグネスに手紙を送った「ジャック」は自分だと言いますが、ジャックを怪しむフォイルはアグネスについて質問します。

 

ヘイスティングズの緑地に大きなショッピングモールを作る再開発計画があり、アダムとサムの下宿も取り壊される予定になっています。緑地を残したいと言うアダムに、住民のことを考えない傲慢な態度を取る開発者。賛成できないアダムは、サムと一緒に反対運動を開始します。フォイルから、以前緑地で遺跡の発掘計画があったと聞き、遺跡の存在を証明して開発を中止しようとします。

サムとアダムは緑地にローマ人の墓地があったことを突き止め、開発計画は中止になるかと思った矢先、2人の下宿がガス爆発を起こします。下宿経営をあきらめる2人。崩れていく下宿の中で、アダムはサムにプロポーズします。そんな状況でプロポーズされるのも、なんだかサムらしいです。

 

「ジャック」がジャック・スタンフォードと同一人物なのかを疑うフォイルとミルナーラムジーに会いに行き、「ジャック」という名前に覚えはないかと聞きます。ラムジーは、ジェームズが幼い頃、キャロラインから、好きなマンガの主人公の名前の「ジャック」と呼ばれていたと答えます。「ジャック」はジャック・スタンフォードではなく、ジェームズでした。

最後のピースがようやく見つかりました。「ジャック」という名前は、母と息子の幸せな記憶の一部だったのです。それに気づいたフォイルの苦し気な顔は、すでに失われた2人の幸せを思いやったからでしょうか。

すべてがわかったフォイルはジェームズに会い、本当のことを話すよう促します。

ジェームズがイギリス自由軍団に入ったのは、兵士の士気を下げ、ドイツの情報をイギリスへ送るためでした。ジャック・スタンフォードもその組織にいて、ジェームズの行為に気づいていました。ドレスデンで大きな爆撃があった後、ジェームズは一時行方不明になり、ジャック・スタンフォードはそのことを利用してジェームズに成り代わり、イギリスへ戻ったのです。イギリスへ戻ると、自分が本物の「ジャック」でないことを知るアグネスを殺害しました。 

フォイルはジェームズに、若い頃キャロラインと出会っていたことを話します。キャロラインはすでにチャールズと結婚していましたが、結婚生活は絶望的なもので、フォイルとキャロラインは互いに惹かれあうようになりました。しかしキャロラインはチャールズの子を妊娠していることがわかり、子どものためにチャールズの元へ戻りました。不幸な結婚生活に戻ったのはジェームズのためでした。

もしかすると、キャロラインは幼いジェームズに「正義感の強い警察官の友達(フォイル)」の話をしたことがあるのかもしれません。ジェームズが警官になりたがっていたのはその影響かもしれないとフォイルを見るジェームズを見て思います。

キャロラインは事故ではなく、ピアノ教師の窃盗を偽装して刑務所へ送った夫チャールズに離婚を切り出し、デベローの家柄が離婚するわけにいかないとキャロラインを殺害したのです。幼いジェームズはその一部始終を見て、いつか父を罰したいと思っており、そのために今回の裁判を利用したのでした。自分が処刑され、父チャールズも社会的な制裁を受けることを望んでいました。

ジェームズは本当のことを話し、解放されることが決まります。

私を忘れてと言って夫の元へ去るキャロラインを引き止めず、その後その夫によりもたらされた彼女の死を知ったことは、フォイルに苦いものを残したのではないでしょうか。 必ず力になるとジェームズに伝えたのは、キャロラインへの罪ほろぼしでもあったのかもしれません。

 

サムとアダムに見送られ、フォイルはアメリカへ向かいます。

 

 

『刑事フォイル』について書いた記事

 

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