糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

安室ちゃんの引退に寄せて

キラキラと歌い踊るのをまだ見ていたい。

10代の頃の元気いっぱいの笑顔を知ってる。結婚、出産、離婚、SUITE CHICとしての活動、「安室奈美恵」としての再登場。正直に言うと、私は安室ちゃんの大ファンというわけではないけれど、彼女がアーティストとして活動した25年間の、そのときどきの彼女の姿とそれを見ていたときの自分の感情を思い出せる。

それは多分、「安室奈美恵」は、すでに好きとか嫌いとかいう対象ではなく、常に輝きを放つ揺るぎない存在だから。それは同時に、キラキラと輝くことで余計にその影は濃いのだろうと、そしてその影を見せない強さがあるのだろうと思わせられるから。

 

安室ちゃんのアーティストとしての活動を、私は3つの時期に分けてとらえている。

デビューから小室さんプロデュースの時代。小室さんとの契約が終わり、次の道を模索しながらSUITE CHICとて歌っていた時期。そして安室奈美恵として戻ってきてから今まで。

 第1の時期の小室さん時代の歌では、私は『Dreaming I was dreaming』が好き。 

Dreaming I was dreaming

Dreaming I was dreaming

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 『You're my sunshine』は大好きで夏になると口ずさんでしまうし、『Body Feels EXIT』は今聞いても興奮するし、 『 Don't wanna cry』や『CAN YOU CELEBRATE?』は思い出の詰まった歌なんだけれど、1番を選ぶとしたらやはり『Dreaming I was dreaming』になる。

他の歌は、別のアーティストの方が歌っていたとしてもいい歌として世間に認知されていたかもしれないけれど(安室ちゃんが歌ったからこそ、あれだけのインパクトある歌になったのだとは思うけれど)、『Dreaming I was dreaming』は安室ちゃんでなければ、ここまで心に入ってくる歌にはなっていないんじゃないかと思う。彼女が抱えてきた(だろうと私たちが想像している)ものが、あの歌に愛しさとその裏にある孤独を感じさせる。

 

第2の時期はSUITE CHIC時代。

たった3年ほどだったけれど、この時代の歌はどれもカッコいい。ZEEBRAやVERBALと組んでカッコよくならないはずがなく、楽しそうにコラボしているのも印象的だった。けれど、もう「安室奈美恵」としては歌わないのかとちょっと心配した。 

Wet'N Wild feat. SUITE CHIC

Wet'N Wild feat. SUITE CHIC

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"Uh Uh……"

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 そして最後、安室奈美恵として再び歌い始めてから今まで。

第1、第2の時代とは違う新しい安室ちゃんだった。私が1番好きな歌は『Get Myself Back』。 

Get Myself Back

Get Myself Back

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今までの安室ちゃんの歌の中でもこの歌が1番好き。クリス・ペプラーさんが日曜午後のあのラジオ番組で、「この歌は安室ちゃん自身のことを歌っているように感じる」という内容のことをおっしゃっていましたが、私も同じことを思った。

 自分を見失っていたことに気づき、前を見てただ進んでいた頃を思い出し「だいじょうぶ、きっとすべてはうまくいく」と言い聞かせる歌詞がとてもよくて、何かうまくいかないことがあるとき、いつもこの曲を聴いている。

 

40歳、デビュー25周年。

急なことに思えた引退発表だけれど彼女はずっと前から考えていて、20代の頃から引退は頭の中にあったらしい。

35歳で20周年が終わった後の心境を、NHKで放送された『告白』という番組の中で語っていた。

「全てを本当にもうやりつくした、自分の思いのたけも、やれること全てをやりつくしていたので、20周年の後で引退できないって知ったときに、ああどうすればいいんだろうって。」 

「引退を25周年に定めてと思っていたので、この5年をどう過ごすべきか」「コンサートでとにかくファンのみなさんに楽しんでもらうという5年間に集中しようと。なので、毎年毎年のアルバムリリースの計画を立てて、みんなに喜んでもらえるようなアルバムを作って、コンサートをして」

40歳前後で、今までの人生を振り返り、今後の人生を考える人が多いと聞いたことがある。自分の限界が見えてきて、でもまだ気力も体力もまあまあある年齢で、何かするとしたら何ができるのか。これから失っていくもの、手に入れられるもの。今自分が持っているものは何か、足りないものは何か。自分の人生を一度棚卸しして、これからを考え直すのに、40歳はちょうどいい時期なのかもしれない。

安室ちゃんの場合は、たまたま引退が40歳と重なっただけかもしれないけれど、自分がこの先の人生ですべきこと、できることは何かをやはり考えていたんだろうと思う。

 『告白』の中で、彼女はこう言っていた。

 「経験することは1番の未来につながるものだし、そこでしか学べないことが多いので、どの時間も無駄ではなかった」

 とても濃い25年という時間を経験してきた彼女は、これからどんな未来を選んでいくんだろう。25年間、歌を通して彼女の人生をほんのひとかけら共有してきた私は、できることなら、何かを通して今後も彼女の人生をほんの少しでいいから共有していたい。「 引退は一つの通過点」と話す「安室奈美恵」がどう進んでいくのか見てみたい。