読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

糸をほぐす

頭の中のからまった糸をほぐすように、文章を書いています。

『刑事フォイル 戦争の犠牲者』

 『刑事フォイル 戦争の犠牲者』の感想を書いています。第4シリーズパート2の2話目(NHK BSプレミアムでは2017年1月22日、1月29日放送分)です。

f:id:umisoma:20170204175951p:plain

 

あらすじ

<前編>

1943年3月。フォイルのもとに、かつて親しかった上官の娘が子どもを連れて現れる。彼女はとても困っている様子だった。一方、ヘイスティングズでは、沿岸部での破壊工作と違法賭博が横行。ミルナーが潜入捜査をしていた賭場で、二人の若い兄弟が大金を使っていたことにミルナーは疑問を抱く。町外れの研究所では、ある研究が秘密裏に行われていた。

<後編>

殺された男は研究所で働くイブリンの夫だった。教授のタウンゼンドは研究を優先させてほしいと、フォイルに殺人の捜査をやめるよう迫る。フランクとテリーの兄弟は、タウンゼンドたちが遺体を森に隠すところを目撃。これをネタに、タウンゼンドから大金を脅し取ろうとする。サムは森にピクニックにでかけたところ、爆発に巻き込まれる。

NHK 海外ドラマHP 『刑事フォイル』これまでのあらすじ より

 

感想

3つの犯罪が交差します。破壊工作、違法賭博、銃による殺人。フォイルは、犯罪者には法による相当の罰を与えるべきという正義を貫こうとします。

フォイルが正義を貫こうとすると、必ず上司と対立します。警視監パーキンスは、フォイルはよく働くが反抗的、君の代わりはいくらでもいると言い放ちます。

フォイルの正義と、戦争に勝つという目的との対立。戦争に勝つためには、法を曲げ、容認してもいい罪があるのか。このドラマで何度も問われてきたことです。見ごたえのある話でした。

 

フォイルが捜査している破壊工作は、スペインの大使館付きの身分のデ・ペレスが、家に盗みに入ったフランクとテリーの兄弟を脅してさせていました。2人は、賭場でミルナーが出会った若い兄弟でした。フランクとテリーの父親は戦地へ行っているため不在、母親はすでに亡くなっていて、デ・ペレスの言いなりになるしかありませんでした。

デ・ペレスは、フランクに爆弾を渡し、町外れの研究所を爆破するよう指示します。この研究所では、イギリスがドイツに勝つために必要とされるある装置の研究を極秘で進めており、フォイルの知り合いのタウンゼンドもここで働いていました。研究所の下見に行ったフランクとテリーは、タウンゼンドらが死体を運んでいるところを偶然見てしまいます。2人はこれをネタにタウンゼンドを脅して大金をせしめ、ヘイスティングズから出ることでデ・ペレスから逃れようとします。生活するためにお金を手に入れなければならず、そのためには犯罪に手を出すしかない2人も、戦争の犠牲者なのです。

フランクとテリーが見た死体は、研究所の秘書として働くイヴリンの夫リチャーズでした。イヴリンは、研究所の装置を壊そうとしたリチャーズを、装置を守るために仕方なく銃で撃ったと告白しました。しかし、フォイルはその裏にある真実に気づきます。

フランクとテリーに破壊工作を指示していたデ・ペレスはスペイン人です。スペインは1939年に中立を宣言したものの、裏でドイツに協力していました。デ・ペレスの破壊工作も、イギリスの軍事力を弱めようという意図でなされものです。しかし、デ・ペレスに対しては、治外法権のために手が出せません。

一方、フォイルの家を突然訪れてきたかつての上官の娘リディア。彼女は誰も頼れる人がなく、息子のジェームズは空襲を受けて以来言葉を話さなくなり、精神的、経済的に追い詰められ、ある日姿を消してしまいます。

リディアがいない間、フォイルはサムにジェームズの面倒を頼みます。サムがジェームズに読む絵本もパズルも戦争に関するもの。空襲でショックを受けているジェームズを気遣い、サムはおもちゃ屋で戦争に関係ないものを探しますが見つかりません。すべてが戦争に染められていきます。戦争とは国がかかる熱病のようなものなのでしょうか。

 

フォイルは、パーキンスの元を訪れ、デ・ペレスの状況について尋ねますが、逮捕することはできないとわかっただけでした。

  「罪を償わない人間ばかり。」

 パーキンスにリチャーズ殺害の真実を告げ、その証拠があると言っても、パーキンスは

「それでは不足だ」

と動きません。

「不足。私にはもう十分です。」

 フォイルが最終的に警察を去る決断を下したのは、この瞬間だったのではないでしょうか。パーキンスの反応次第では、警察に残ったのかもしれません。

「もう飽き飽きしました。戦争に勝つためという言い訳にも、少年たちを脅して破壊工作をさせた男には手を出せないのに、親が近くにいないゆえに道を踏み外したまだ若い兄弟には数年の重労働を課すとか、部下が見ている前で私を怒鳴りつける警視監にも。ええ、もう十分ですよ。」

フォイルにしては長いセリフからも、鬱積した気持ちが推し量れます。

フォイルはパーキンスの机に辞表を置き、パーキンスが引き留めるのも聞かずに部屋から出て行きます。

フォイルの辞表には、その無力感が表れていました。

「前にも申し上げましたが、戦争中に法を守るのはほぼ不可能です。その任務を遂行する能力がない以上、本官が現在の地位にとどまるのは無意味だとの結論に至りました。」

どうしても正義を貫けないと感じたフォイルの決断は、仕方ないのかもしれません。 フォイルの決断を聞いたサムとミルナーの表情が切ないです。

 

 

『刑事フォイル』について書いた記事 

 


 

 

 

umisoma.hatenablog.com